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NHK連続テレビ小説「まんぷく」にマーケティング戦略を見る

NHK朝ドラマ「まんぷく」は、動画で見せる経営の教科書

 NHKの連続テレビ小説「まんぷく」が実におもしろい。それは豪華な俳優陣たちの素晴らしい演技だけでなく、その波乱万丈の展開が、まさに経営戦略やマーケティングの考え方を物語っているからだと思います。まるで生きた教科書、いや動画と呼ぶべきでしょうか?このドラマは、即席ラーメン開発物語だけではないですよとお伝えしたくなりました。

 

その1、ビジョン、ミッション

この世にないものを作り出す萬平さんが開発したのが「まんぷくラーメン」、お湯をいれるだけで、美味しいラーメンのできあがり。これは「ものづくりニッポン」の原点です。開発の背景には、萬平さんのビジョン「誰でも気軽に安く美味しい安全なラーメンを作りたい」という自らの「ありたい姿、理想な状態」がありました。そして萬平さんのミッションは、「主婦が手軽に作れることで、家事の負担をなくしてあげたい」まさに今の時代で問われる経営の基本がそのまま反映されています。

 

その2、マーケットインプロダクトアウト

商品開発には、長い時間と労力、そしてお金がかかります。まさに試行錯誤の末に創り出した製品が「まんぷくラーメン」です。

萬平さんのビジョン、ミッションのもとに誕生した「主婦が手軽に作れることで、家事の負担をなくしてあげたい」という顧客にとっての便宜の視点で発想することを「マーケットイン」といいます。そして開発者の思いを製品につぎ込んで生まれた製品のことを「プロダクトアウト」といいます。

 

その3、マーケティングコミュニケーション(テレビCM)

どうやってこの画期的な「まんぷくラーメン」が美味しくて、簡単に作れて、栄養たっぷりであると伝えることができるか、「まんぷく食品」は、悩みます。そしてテレビCMを投下することに決めました。経済発展途中の日本には、テレビは三種の神技と言われるほど大事なもので、テレビがあるお宅は一日中テレビを見ていたかもしれません。その中に登場した「一家に5袋まんぷくラーメン」は、瞬く間に注文が殺到します。まさに「認知促進」という「ワンプロモーション、ワンストラテジー」の考え方によるCMの集中投下が売り上げにつながったのです。商品を発送するダンボールにも「まんぷくラーメン」のロゴが刷り込まれ、市場に伝えるコミュニケーションが効いています。

 

その4、プライスマーケティング

少し話は戻りますが、「まんぷくラーメン」の価格を決定するときに、いくらが適正価格なんだと皆で議論しました。20円という価格は、決して安いものではありません、しかし画期的な開発であること、お客様に利便性をもたらすこと、保存性などの観点から20円という価格設定にしたのです。

当時は100円札がありましたから、5個買うとおつりの出ない100円という価格は、「キリも良くちょっと無理すれば入手できる」購入者の視点ならではの考え方だと思います。まさにプライスマーケティングの会議を見ているようでした。

 

その5、パッケージマーケティング

そして商品のイメージを決める大事なパッケージは、画家の忠彦さんがデザインします。商品の一部が見えるように工夫されたデザインは、中身はどんな感じになっているんだろう?、色は、形は?のお客様の興味をそそるのに十分でした。あれ、何かに似ていませんか? そうです、お正月に良く目にする「福袋」です。福袋も端っこを少し開けて、安心と期待をお客様に与えています。実際、パッケージを変更しただけで商品の売上が変わることは多々あります。同じ製品でもパッケージを少し変更すると、お客様には新鮮に映り、まるで新商品を買い求めるかのように売り上げがのびていくこともあります。

特に「○○限定」という言葉は、売上を伸ばす魔法の言葉、多くの人がつい購入してしまうキラーワードなのです。

「まんぷくラーメン」のパッケージも番組だけではもったいないくらい、中身と商品への思いが伝わる良いデザインですね。店頭に並んでいたら、誰もがお試しに購入してしまうのではないでしょうか?

 

その6、ブランドマーケティング

まず、萬平さんたちは、このラーメンの呼び方の総称を「即席ラーメン」としました。新しい商品カテゴリー名の誕生です。

そしてその商品開発を特許庁に実用新案申請します。しかし審査中の間にたくさんの粗悪品が類似商品として市場に出回ります。粗悪品を食べて身体を壊したりする人がいたら、即席ラーメンは体に悪いものと考えられてしまうと、萬平さんは、日本即席ラーメン協会なる社団法人を設立します。この協会に所属すると、安全な即席ラーメンの製造法を共有することができ、強いては業界全体の即席ラーメンの質の向上につながります。そしてその開発者である「まんぷく食品」は、元祖となり、売上げも向上していくことでしょう。即席ラーメンの元祖「まんぷくラーメン」のブランディングです。 

 

その7、プロダクトマーケティング

商品には、ライフサイクルがあります。人の一生と同じで誕生から成長期、衰退期があるのです。ロングセラーと呼ばれる製品はたくさんあります。「まんぷくラーメン」もロングセラーになることでしょう。しかし企業は常に商品やサービスを誕生させていかないと、衰退期を迎えたと気付いた時には企業全体が手遅れになってしまいます。ここからは私の想像ですが、おそらく萬平さんは、マンネリ化してきた「まんぷくラーメン」に卵を落とすという「新しい価値の創造」をお客様に与えます。これにより「まんぷくラーメン」は、ピークを過ぎた商品を成長期へと蘇生したのです。

 

次に「まんぷく食品」は、新しいラーメンを開発するでしょう。なるとやシナチクをいれたカップヌードルへとつながっていくのだと思います。

「ラーメンなのに、なぜシナチクやなるとが入ってないの?」「外にいても簡単に美味しく食べれるラーメンを作ってあげたい」、お顧客の視点から生まれた「マーケットイン」の発想こそ、ロングセラー商品を生み出す秘訣です。それは「まんぷく食品」の見事なプロダクトマーケティングでした。私たちに即席ラーメンという新しい価値を与えてくれた萬平さんと福ちゃんには、感謝の念がやみません。

 

ただひとつ残念なことがあります、萬平さんは、「まんぷくラーメン」を売り出す前に、各報道局に向け、プレスリリースを配信するべきでした。世界初の画期的なこの発明品は、その手軽さ、美味しさに記者もびっくりして、各社競って取材の申し出をしたことでしょう。特許庁に申請する前に配信していれば、産業スパイと手を組んだ類似商品のために時間を費やす必要はなかったかもしれません。生活者が喜ぶ情報を配信することは、メディアの醍醐味でもあります。メディアが喜び、生活者が喜び、企業も喜ぶ「三方良し」のプレスリリースが良いリリースと言えます。

 

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