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健康登山本を出版「病院不要の社会をつくりたい」-齋藤繁・群馬大学医学部附属病院長に聞く◆Vol.2

m3com 群馬版 齋藤繁先生インタビューを執筆しましたVol.2

群馬大学医学部附属病院長であり同大学大学院医学系研究科麻酔神経科学分野の教授も担う齋藤繁氏は、地元の新聞社と提携し地域住民のための「健康登山塾」を毎月開講している。2021年4月に発売された著書『登山で病気に負けない体をつくる健康トレーニング』は、塾生の健康に関する教科書となっている。日常的に登山を続ける齋藤氏に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を防ぐ登山のやり方や抵抗力を高める体づくりについて話を聞いた。(2021年7月20日オンラインインタビュー、計2回連載の2回目)

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左上:インタビュー中の齋藤氏、左下:妙義山クライミング、右:Mt, Crown クラウン峰挑戦(本人提供)
左上:インタビュー中の齋藤氏、左下:妙義山クライミング、右:Mt, Crown クラウン峰挑戦(本人提供)

8月28日発行 m3com地域版 群馬県ニュースの記事原文 2/2

――普段はどのくらいの割合で登山されるのですか。

 

群馬大学は榛名山と赤城山に囲まれています、車で30分も走れば谷川岳です。外国の山や北アルプスに登るのとは規模が違いますが、自分にとって山登りは日常の散歩のようになっています。明日は天気が良さそうだなとか、今日 は早く帰れるから明日登ろうとか、思い立ったら一人で登ります。COVID-19感染拡大で学会がWeb開催になってしまい、週末に外出する予定もないので近くの山に登る機会は多くなりました。3時間で戻ってこられるので、日の出の4時半にあわせて登れば、7時半には戻ってこられます。シャワーを浴びても9時前には、論文を書いたり気になる症例の術後の確認をしたりと日常の過ごし方が十分にできます。

 

――医師として登山することもあるのですか。

 

COVID-19前までは、とある企業の社員研修のアテンドで、医師10人、看護師15人とともにチームを組んで、毎年総勢300人から400人ぐらいで富士山に登っていました。初めての富士登山という方が多いので、具合が悪くなったりする方がいます。その方々のケアのためにわれわれがアテンドしています。

 

――登山時に救急現場に出合ってしまうことはありますか。

 

二度ほど心肺停止の状況に出合いました。カナダから来た外国人が富士山8合目の途中あたりで心肺停止になってしまい下まで運びました。また登山中に足を骨折したり、くじいたりという現場に出くわすことはあります。そういう時はストックを貸してあげて、一緒に降りていきます。そのような状況に対応するためにも医師である自分が登る意義はあると感じています。

 

1992年 Mt.Crown (クラウン峰)にて登山途中の齋藤氏(本人提供)
1992年 Mt.Crown (クラウン峰)にて登山途中の齋藤氏(本人提供)

――思い出に残る登山はどこですか。

 

1992年、大学院の学位論文を提出した後に日本ヒマラヤ協会クラウン峰登山隊に参加しました。アフガニスタンと中国の国境未確定領域に位置する未踏峰7295メートルのMt.Crown(クラウン峰)の登山です。110日間行っていました。メインの山に行くまでに2カ月かかり、途中で雪崩が起き撤退しましたが、仲間を一人失いました。母親にはこれで最後にしてほしいと懇願されました。

 

――登山医学に関する論文も発表されていますが、先生にとって医学と登山は切り離せない関係なんですね。

 

もともとは医師という選択肢はなく、山に関係する仕事に就きたかった。それゆえに、自分の医師としての役割と山への結びつきを深めることで、自分の目的に近づいていったと言えるかもしれません。今は山登りを通じて皆さんの健康増進を支援していきたいと思っています。

 

――健康登山に関する本もたくさん執筆されていますね。

 

上毛新聞と中高年のために何かできないかということで、2017年に健康登山に関する本を出しました。登山を楽しんでいただくためのコースガイドにもなっています。50コースぐらい提示しているので、その人の体力や技術レベルに応じてコース選択の参考にしていただきたいと思っています。この本は健康登山塾の教科書にもなっています。COVID-19感染拡大で週末の学会参加がなくなり、山登りの時間が増えて(笑)、登山中に写真を撮ることもできたので、2021年4月に続編がもう1冊出版されました。

 

 

齋藤氏執筆『登山で病気に負けない体をつくる健康トレーニング』(2021年4月26日発売/上毛新聞社)
齋藤氏執筆『登山で病気に負けない体をつくる健康トレーニング』(2021年4月26日発売/上毛新聞社)

 

――先生にとって医療とは何ですか。

 

医療のいらない状態が理想だと思っています。病院が必要ないくらい皆が健康で治療を必要としない社会を目指したいと考えています。人生が終わるときまで病院にいかなくて済む状態。病院は、そういう時代が来るまでのつなぎでありたい。そのために病気にならないように医療知識の普及や健康支援活動を展開すべきだし、リハビリでは回復強化を目指していく。医療行為が終わったら元の状態に戻れるような医療を目指すべきと考えています。警察がいらないほど治安が良い、消防署がいらないほど火事がない状況が良いのと同じように、病院が必要ない社会をつくっていきたい。健康な状態を維持するためにも皆さんの体力づくりに、これからも貢献していきたいと思っています。

 

――先生、長時間にわたりお話お伺いできましてありがとうございました。地域の皆さんに対する愛情をたっぷりと感じました。途中から通信環境が悪く、お電話にてご対応いただきましてありがとうございます。健康登山塾の再開が楽しみですね。ありがとうございました。

 

 

齋藤先生ご執筆の本紹介

山登りでつくる感染症に強い体ーコロナウイルスへの対処法ー (2020年10月17日/山と渓谷社)
山登りでつくる感染症に強い体ーコロナウイルスへの対処法ー (2020年10月17日/山と渓谷社)

健康登山塾の教科書 Vol.1

登山を楽しむための健康トレーニング  (2017年8月17日発売/上毛新聞社)
登山を楽しむための健康トレーニング (2017年8月17日発売/上毛新聞社)
「体の力」が登山を変える  ーここまで伸ばせる健康能力ー   (2014年11月21日/山と溪谷社)
「体の力」が登山を変える ーここまで伸ばせる健康能力ー  (2014年11月21日/山と溪谷社)
病気に負けない健康登山ードクターが勧める賢い登山術ー (2010年5月17日/山と渓谷社)
病気に負けない健康登山ードクターが勧める賢い登山術ー (2010年5月17日/山と渓谷社)

 齋藤繁先生が教授を務める群馬大学大学院医学系研究科 麻酔神経科学の「教室紹介」には、たくさんの登山の動画が拝聴できます。

https://anesthesiology.med.gunma-u.ac.jp/classroom/movie

◆齋藤 繁(さいとう・しげる)氏

群馬大学医学部附属病院病院長、群馬大学大学院医学系研究科麻酔神経科学分野教授、医学博士。1986年群馬大学医学部卒業、1993年群馬大学医学部附属病院助手、1995年米国ペンシルベニア大学研究員、2002年群馬 大学医学部助教授、2007年群馬大学大学院医学系研究科教授、2017年群馬大学医学部附属病院副病院長、2021年群馬大学医学部附属病院病院長就任。日本麻酔科学会認定麻酔科専門医・指導医、日本集中治療医学会認定集中治療専門医、日本ペインクリニック学会認定ペインクリニック専門医、日本高気圧環境・潜水医学会認定高気圧医学専門医、日本再生医療学会認定再生医療認定医。群馬県山岳連盟、日本山岳会、日本登山医学会所属。専門は麻酔、集中治療、ペインクリニック、高気圧医学、再生医療。

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