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病院長にして登山愛好家、地元新聞社と提携し「健康登山塾」を開講-齋藤繁・群馬大学医学部附属病院長に聞く◆Vol.1

m3com 群馬版 齋藤繁先生インタビューを執筆しましたVol.1

2021年4月に群馬大学医学部附属病院長に就任した齋藤繁氏は、学生時代にワンダーフォーゲル部に所属し、大学院学位論文提出後は7295メートルの未踏峰Mt.Crownに挑戦したほどの登山好き。山に関する書籍もたくさん出版している。日常的に登山を続ける齋藤氏に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を防ぐ登山のやり方や抵抗力を高める体づくりについて話を聞いた。2021720日オンラインインタビュー、計2回連載の1回目)

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PC画面越しの齋藤先生と聞き手の古舘
PC画面越しの齋藤先生と聞き手の古舘

8月20日発行 m3com地域版 群馬県ニュース記事原文  1/2

――齋藤先生は登山好きで知れ渡っていますが、なぜ医学の道に進もうと思われたのですか。

 

大学受験の時には、他県の森林関連の学部に行きたいと思っていましたが、高校の担任の先生に反対されました。群馬大学は高校からも近いし、医療なら人のためにもなるし、通学のために部屋を借りる必要もないということで、親の財布にも貢献するだろうと地元の大学に進みました。

 

――普段の一日の過ごし方を教えてください。

 

6時半からメールのチェック、7時50分の手術前カンファレンスでその日の手術内容を確認します。過去の似たような症例に関する意見交換をした後は、ICUや手術室を回ります。9時ぐらいから事務方との打ち合わせや外来病棟を訪ね、午後には本部の会議に出席したり関連病院を回ったりして先生たちと面談しています。 

 

――地域の医療機関との連携状況を教えてください。

 

当院には、群馬県全体、栃木県西側、長野県東側、新潟県南側、埼玉県北側から患者さんが紹介されてきます。重粒子線治療など、高度先進医療が認可されていますので、主にがんや放射線治療の症例の患者さんです。外科系また放射線科のほうで診て、状態が落ち着いたら紹介された病院にお返ししています。また大学からは、県内病院へ医師派遣が行われています。後期研修医を含めさまざまな年齢層の医師が県内の病院に常勤、非常勤で派遣されています。

 

――県内のCOVID-19ワクチン接種に関して、群馬大学医学部附属病院はどのような支援をしていますか。

 

6月後半からGメッセ(群馬コンベンションセンター)において、COVID-19ワクチン接種がはじまっていて、当院から医師4人、看護師12人、薬剤師4人を含め1日20人の医療従事者を派遣しています。7月は7000人、8月からは一 日1万人から1万2000人の接種を行い、9月には希望者の接種を終えると山本一太県知事も話しています。

 

赤 城山に登る三人の姿をドローン撮影(齋藤氏・木村氏提供)
赤 城山に登る三人の姿をドローン撮影(齋藤氏・木村氏提供)

――地域の方に薦めるCOVID-19感染対策はありますか。

 

まずは免疫力を高めること、それには体力をつけることが必要です。日頃の生活習慣の改善や、呼吸器を強化することでCOVID-19の重症化は防げます。左はドローン撮影した動画のキャプチャですが、この広い空間に登っているのは、たった3人。登山なら街中で運動するより感染する機会は少ないですよね。

 

感染症予防には体の抵抗力を高めることが一番の対策です。近くの山に登ってたっぷりと深呼吸して胸の中の空気を入れ替える。登山は、体力もつくし足腰も鍛えられるし気分も変わるのでお勧めです。

 

雲海を見ながら深呼吸する齋藤氏(齋藤氏・木村氏提供)
雲海を見ながら深呼吸する齋藤氏(齋藤氏・木村氏提供)

 ――大学の社会貢献活動として健康登山塾が生まれたと聞きました。塾について教えてください。

 

群馬大学と上毛新聞、日本山岳会の有志が集まり、「われわれが地域に貢献できることはないか?」ということで始まりました。毎回、大学から医師、看護師が3人から5人ぐらい参加して地域の皆さんと、上毛新聞社のOB、日本山 岳会のメンバーと一緒に榛名山や赤城山に登ります。2020年は、COVID-19感染防止のため前半は中止にしていましたが、9月より再開しました。2021年も10月から始める予定です。だいたい年6回のペースで登っています。

 

初めに健康増進についての講習を行い、体に負担のない登り方や、足腰が衰えないように体力をつける意義などを学んでいただきます。登山中は、血圧や脈拍数を測り、身体の変化を医学的に把握してもらいながら、健康力をあげていくことを目指しています。毎回15人定員のところ150人ぐらいの応募があるので、毎回抽選となり枠を25人に増やしました。日頃の散歩では物足りない方々が参加されています。

 

――参加される方の感想はいかがですか。

 

女性はいつも元気ですね。奥さんが、遅れがちのご主人に「はい、がんばって」とはっぱをかけながら登っていくようなシーンがよく見受けられます。登頂という達成感と普段の散歩では見られない風景が見られるのが良いと、応募者は増えていくので、毎回抽選となります。

COVID-19感染を防ぐ登山(齋藤氏・木村氏提供)
COVID-19感染を防ぐ登山(齋藤氏・木村氏提供)

――登山時の感染予防はどのようにされているのですか。

 

この写真「COVID-19感染を防ぐ登山」のように、人と距離を取って登っています。マスクをして登るのは熱中症の危険がありますので、マスクを外す代わりに人と十分に距離を取って歩きます。並んで歩かずに一列になる。首にはタオルやバンダナなどを巻いておき、人とすれ違う時に口元をそのタオルで隠す。食事をするときも距離を取り、向き合わずに横に座り、雲海や空を見ながら食事をします。

 映像は、齋藤先生よりご提供いただきました。

 

齋藤繁先生が教授を務める群馬大学大学院医学系研究科 麻酔神経科学の「教室紹介」には、たくさんの登山の動画が拝聴できます。

https://anesthesiology.med.gunma-u.ac.jp/classroom/movie

m3com地域版 群馬県ニュース、2回目は齋藤先生のMt.Crown挑戦のお話

◆齋藤 繁(さいとう・しげる)氏

群馬大学医学部附属病院病院長、群馬大学大学院医学系研究科麻酔神経科学分野教授、医学博士。1986年群馬大学医学部卒業、1993年群馬大学医学部附属病院助手、1995年米国ペンシルベニア大学研究員、2002年群馬 大学医学部助教授、2007年群馬大学大学院医学系研究科教授、2017年群馬大学医学部附属病院副病院長、2021年群馬大学医学部附属病院病院長就任。日本麻酔科学会認定麻酔科専門医・指導医、日本集中治療医学会認定集中治療専門医、日本ペインクリニック学会認定ペインクリニック専門医、日本高気圧環境・潜水医学会認定高気圧医学専門医、日本再生医療学会認定再生医療認定医。群馬県山岳連盟、日本山岳会、日本登山医学会所属。専門は麻酔、集中治療、ペインクリニック、高気圧医学、再生医療。

編集後記

――地域の皆さんが健康登山塾の開催を楽しみにしているお気持ちが良く分かります。健康登山は、豊かな自然を見ながら体力づくりができ、コロナ感染リスクも少ないというのは、一石二鳥の健康法かもしれません。

 7月末に先生の影響を受け、神奈川県の箱根山明神ヶ岳にいってきました。残念ながら途中通行不可となっており、登頂できませんでしたが、自然の空気をたくさん吸ってきました。